「大幅に人数減ったけど、打ち上げ始めるか?」 「…そうですわね。せっかく私が準備して待っていたんですから」 此処は三嶋千晶嬢の家である。結局、高志と仁美には逃げられちゃったから、本当に希望者だけの打ち上げもとい飲み会であった。あ、もちろんお酒など飲んでいません。ただ、夏休み最後ということで飲んで食べて暴れたいだけだ。よく千晶嬢も自分の家を提供したなとつくづく思う。まぁ、初めは高志の誕生日会の予定だったんだし、その高志の親衛隊メンバーのリーダー格の千晶嬢が提供するのはおかしくない。 とりあえず、千晶嬢が幹事になるかと思ったけど、それじゃぁあんまりだと思って仁美の代理は私が勤めることにした。仁美が帰ったことだし、私と仲良い子があんまり来ていなかったから適当に飲み食いしてたんだけど、そこで誠人と千晶嬢の会話が耳に入った。 「で、仁美さんと高志様は、少しは進展したのですか?」 …千晶嬢って高志が好きだから、リーダー格張ってると思ったんだけど、実際は違うの?じゃないとこんな会話しないよね…普通。 会場こそ千晶嬢の家だったけど、他の高志が好きよメンバーはほとんど来ていない。というのも、高志が既に帰ってしまったというのが原因である。高志が家に帰るという時点で、自分達も帰ると言い出した子も多い。そのため、今、打ち上げに参加している比率は圧倒的に男子のほうが多かった。 「それが進展したのか進展してないのか…」 「…せっかく舞台を用意してあげたというのに、だらしがないことですわね」 「しょうがないだろう。アイツも仁美も馬鹿だから」 「それは言えてますわ…今日は私のほうから皆さんに頼んで、二人きりにさせてあげたのですがね…」 「ホント、それはサンキュ。千晶」 「いいえ、貴方がお礼をいうことじゃありませんから」 「…お前も本当につれないな」 「それは貴方もでしょう?誠人」 二人の間には確実に何か怪しい空気が流れているのがわかる。というか、誠人が千晶嬢のことを名前で呼んでいるし…!いつも、学校では三嶋って名字で呼んでなかったっけ?アレ?どういうことなの?しかも、千晶嬢も誠人のことを呼び捨てにしてたっけ? …でも、あの二人が画策しているっていうことがよくわかった。さらに彰人がこれに加わっているし、私も加担している。 なんとかしてあの二人をくっつけようとしているのは数多いみたいで、仁美も高志も幸せものだな。クラスの男子もあの二人をくっつけさせようとしているのはわかる。だからこそ、さっさとくっ付きやがれ、っていうんだけどね。一体、どれだけ周りに迷惑かけているのかわかっているのかな。 「何、話してんの?二人とも」 「あら、律さんじゃありませんか。肝試し、お疲れさまですわ」 「ありがとう。そっちも準備お疲れ様。んで、私も仲間に入れてよ」 「うーん?アイツ等がさっさとくっつくためにはどうすればいいかっていう話」 「…そうね。どうすればいいのかね」 周りはあの二人のことを認めていると思う。だけど、さっさとくっつかないから、高志の周りに女が寄ってきているだけなんだよね。私達がどうにかしようとしても、あんまり進展ないに近いし…まぁ、あの二人のことはあの二人に任せるしかないってことなんだけど。 それに、今は自分のことで精一杯なのかもしれない。 「…二学期から、高志がどういう行動をとるかが鍵だろうな」 「ですわね…」 「まぁ、なんとかなるでしょう」 誠人と千晶嬢と私と三人。 仁美と高志がさっさとくっつくことを願っている夜のことだった。 2010/3/11 Copyright (c) 2010 Akari Minaduki All rights reserved. |