「で、お前これからどうするつもりだ」
「……なにを?」
 無理やり誠人に連れられてファーストフード店に連れて来られた。学校帰りに寄り道なんて本来校則違反。けれども誠人からしてみれば一刻も早く聞きたかったみたいだ。それぞれが注文をして席に着くと誠人が声をかけてきた。
 やはりか、と思ったが、惚けたように答えた。たぶん、今朝のことがあってのことだろう。俺も彰人さんがあそこまでするなんて思っていなかったし、何時の間にあんな写真を撮ったのだろうかと驚いた。
 それに、俺自身が一番悩んでいるところだ。お前に聞かれるまでもない。
「……どの口が言っているんだが」
「仕方ないだろう。俺だってこんなことになるなんて思ってなかったんだよ」
 ホントこんなことになるなんて思っていなかった。それに、これからが悩みの種だ。仁美に対してもだが、学校生活が崩壊するのではないかと危惧している。いままでも普通の一般高校生からしてみればありえない生活を送っている気がしてならない。別に何もしていないのにどうしてこうなっているのか……
「で、あの写真の詳しい経緯は?」
「……お前達が帰った後、彰人さん待っていたけど―――」
 俺は事の経緯を誠人に説明した。学校で聞いてこなかったのは、誠人の配慮だろう。そこのところははっきりいってありがたかった。周りのやつらも俺ではなく、仁美に聞いてくるからまた迷惑かけてしまったな。

「……彰人さん、ホント策士だな」
「まぁ、それがあの人があの人である所以だとは思うけど」
 たぶん、あの人に敵うことはこの先もないだろう。あの人に敵おうなんて思ったりもしないけど、あの人に振り回されるのも
「それより、高志、この他にも何かあったろ?」
「え?」
 誠人の鋭い指摘にドキッとしてしまう。確かになりゆきで仁美とクリスマスデートができるようになった。けれど、誠人が知る必要はないことだ。いや、知られたくない。知られたらいろいろと聞いてくるに違いない。
「その顔、やっぱり何かあったな?」
「いや、別に」
 一応、否定する。
 しかし、誠人相手にばれるのは時間の問題だと思うけど。彰人さんから情報回るだろうから、今話しても何ら問題ないんだが……実際のところ実感がわかない。
 仁美以外の女の子とデートしたことがないわけではない。
 でも、仁美とデートってどうしたらいいかよくわからないが正直なところ。今までのようにすればいいんだろうって思うところもあるけど、仁美は何処かずれている。
 世間一般の普通のデートなんかじゃ駄目だろうと思う。さらに、彰人さんと長谷川とのダブルデートとなると、普通が普通でなくなるのは目に見えている。
 そもそもどうしてあんな条件を長谷川が出してきたのかよくわからない。俺のことを思ってか……相変わらず鈍感な仁美のことを思ってのことか。答えを聞こうにも聞きにくい。彰人さんが仁美とデートするように言われても、絶対嫌がるだろうから俺はイエスと言うふりをしたまでだ。
 当日というより、彰人さんがいないところでそんなのなしでいいって言うつもりだったのに、長谷川のやつは何を考えているつもりなのかさっぱりわからない。
「……まぁ、その辺は彰人さんとか長谷川から直接聞くよ」
「そうですか……」
 はい、ばれるの決定。ばれた後が少し怖い。付き合いの長い誠人相手に、スルーすることも難しいからだ。今言ってしまったとしても、これまたしつこくいろいろと聞いてくるだろう。
「けど、仁美はこれからが大変だろうな。カバーしてやれよ。いくら生徒会の副会長に任命したからといって安心できるってわけじゃないぞ」
「……わかっているさ」
 仁美を守るつもりで副会長に任命したけど、これが正しい選択だったのかって問われたらもしかしたら間違っているかもしれないって思えてきた。仁美のことをほぼ全校生徒が知ることにもなってしまったし、これから仁美への嫌がらせが増えることも予測される。
 それでも俺は―――
「彰人さんも思いきった行動に出たし、どうなってんだか……」
「……誠人、お前ならどうする?」
 誠人は昔から頼りになる。あまり目立ったことはしないが、誠人のほうが生徒会長に向いているんじゃないかって思える。今からでも役職交代してもいいくらいだ。
「別に。好きな女を守るだけ。まぁ、俺の場合、アイツは自分の身くらい自分で守るだろうけど」
「そっか……」
 誠人に付き合っている彼女がいることは知っていたが、誰かは聞かない。1度だけ聞いたことはあるけど、はぐらかされた。たぶん、俺が知っている相手なのだろう。自分の身くらい自分で守るのは仁美も同じだが、俺がもっと手を差し伸べてやるべきだったのかもしれない。俺が手を差し伸べたところでアイツは振り払うとは思うけど。
「どうした?お前らしくもない」
「……ホント、どうするかな」
 彰人さんがたとえあの写真を公表しなくても、きっと質問攻めになるのは目に見えてわかっていた。俺の軽率な行動が原因だってわかっている。
 手錠もだが、公衆の面前で仁美にキスなんてしてしまったのだから。あのときの俺は仁美の勘違いをわかっていても、頭では納得していなかったんだと思う。
 所詮、自業自得というものだ。どうにかするしかない。
「お前の助けなんかなくても仁美は負けないさ」
「……わかっているよ」
 仁美にとって俺の存在はきっと、隣に住む幼馴染のウザい奴と思われているだろうからな。
 俺の助けがなくとも仁美は大丈夫だと思う。逆に助けを出そうとすると怒りだすだろう。
 だから見守る。何事にも負けない仁美のことが好きだから。

2011/7/1

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