プールの流れに乗りながら考える。しかし、結論は、間違っているでしょう!ということだった。私はふと思う。どうして、アイツが私を好きという馬鹿な考えが浮かぶ輩がいるんだろうって。それに、アイツのことで、どうしてこんなに心臓がバクバクしてるんだろう。私は、アイツとは幼馴染で、それ以下でもそれ以上でもないはずなのに…どうして、こんな風に思うんだろう。もう何周しているかわからないくらい、流れに乗りながら考えるが答えは見つかることはなかった。
「…私って鈍感なのかな」
 誠人の言葉をいまさらながらに真に受けてみる。自分が、鈍感でただアイツの気持ちに気づいていないとか、自分の気持ちに気づいていないとか…そんな感じなのかな。それとも、また、別のことかもしれない。自分がアイツにどきどきする原因はもっと別のことだと思いたい。だって、アイツのことを自分が好きになるはずがないし、アイツが私のことを好きになることなんて絶対ありえない。地球で何があっても、そんなのはあってはならないというより、ありえることはない。
「まぁ、鈍感といえば鈍感ですわね」
「…千晶ちゃんっ!!」
 流水プールに1人で流れていたはずなのに、いつの間にか隣には色白で皆から綺麗とかかわいいとか言われている千晶ちゃんがいた。千晶ちゃんは、結構お嬢様で美人だけど…日焼けしたくないとか言っていたから、てっきりアイツ目当てで来て、プールに入るはずなんかないって思っていたんですけど…そんなことなかったんだ。水着も結構かわいらしいものを着ている。私は普通の水着ですよ。えぇ。こうやって、可愛い人と並んでいると自分が惨めな気持ちになってくるのは気のせいでしょうか。いや、気のせいではないはずと思う。
「…まぁ、仁美さんったら、そんなに驚かれてどうしたんですの?」
「いきなり、現れるからでしょう」
 それ以外に何があると言う。
「そりゃぁ、高志さまが逃げられた。イコール、貴方の傍に現れるってことですもの」
 そんなこと言われても、私は知らないって。だって、アイツが私の傍に現れることなんて、ほとんどないって。あれ、でもよくよく考えたら…いつの間にかアイツ、私のそばにいるような…てか、微妙にあっているような…でも、学校なんかはそんなことないのに、アレ、どうなっているわけ?
「それ、間違っていると思うんだけど」
 実際、アイツが傍に現れたから私は逃げているけど…確かに、さっきはいきなり現れやがったからあっているんだけど…アイツがまた私の傍に現れるなんて事なんかありえないと思っているんだけど。
「仁美っ!!」
「げぇ…」
 本当に現れやがったよ。アイツが。つか、どうして居場所がわかったのかな…
「高志様―!!」
 千晶ちゃん、1人喜んでいるけど、実際に現れた。つか、現れる理由は何だよ。絶対何かの陰謀じゃねぇか!!そう思いたくなるのは、どうしてだろう。私って、自分でもときどきわからなくなるんだよね。なんで、こうなるんだろうって思えてくるところがたくさんある。
 アイツは、水をかき分けながら私たちのところにやってくると、千晶ちゃんはアイツの腕をつかんだ。
「一体どこに行かれていたんですの?皆さん、探しているのですから」
 その言葉を聴くと、私はさっさと退散したほうが(正確には逃げたほうが)いいと思い流水プールの流れに乗りなるべく早く進んでいくことにした。
 だが、アイツはそんなことさせないと思ったのか私の腕をがっちりとつかんだ。っていうか、一体どういうことが起こっているかなんて私の低脳の頭には理解できなかった。
「何するのよ…」
「…待てよ、仁美。それより、お前は手を放せ」
「ぇ、高志さま?」
「放せ」
 アイツは力強くそういうと、千晶ちゃんはしぶしぶ手を放した。だが、私の腕をつかんだままで私はこの状況をどうすればいいんだろうとおもった。っていうか、私はココは場違いなんですけど…美男美女の中に普通の女が1人って、最悪な状況だと思いますが。
「…で、アンタも私の腕を放してくれる?」
 放してくれないと困る。コイツと千晶ちゃんと一緒に居たくない。
「できない」
「ぇ」
 できないってなんだよ!オイっ!
「…そんなことしたらまたお前逃げるだろう?」
「はぁ?」
 私は、どういう意味かなんて当たり前のように理解できなかった。そして、コイツは私のその反応にまたため息をつくと力で強引に私を引っ張り始めた。
「ちょっと、何の恨みがあるわけ?」
 コイツに喧嘩売った覚えもないし、何かした覚えもないのに、どうしてこんなことされないといけないのですか?
「別にない…話があるんだよ」
「…はっ、話っていつだって話せるでしょう!」
 家は隣だし、会おうと思えば会えるし、携帯の電話番号とかメールアドレスとか分かっているのに、話しって何よ?直接言わないといけないような重大な話なんてコイツとはないんだけど。
「お前が、俺を避けてるから話しようがないだろうっ!!」
「…っ」
 いきなり、そんな大声を出されても私はなんとも言えなかった。別に避けているとかじゃないけど、なるべく近寄らなかったのは本当のこと。千晶ちゃんは、青白い顔をしている。コイツのこんな姿なんて始めてみるのだから、当たり前だ。
 最近は、こういう熱血系というかそんなコイツを見てなかった。どちらかというと冷たいコイツばかり見てきた。だが、ココに来ていきなりそんな顔を見せられるとは私は思っても見なかった。昔みたいに熱くなっているところなど、久しぶりに見た。
「で、話って何よ」
「そっ…それは……ココじゃぁ、少し言いにくいっていうか」
 …此処じゃ話せない話って何よ。というか、なんで慌てているのよ。慌てる理由なんてないでしょうに。
「……わかった。だったら、場所を移動しましょう」
 何を考えているのかなんてさっぱりわからない。でも、コイツが私に話があるなんて一体なんだろうと思い、私とコイツはさっさとプールをあがろうとした。すると、千晶ちゃんもプールからあがる。そして、コイツに一言言ったのだ。
「私も付いていきます!高志様が何を言おうとしているのかは大体想像はできます…ですが、お願いします。私も連れて行ってください」
 ちょっと待て。どうして、私に話があるのに、話の内容が千晶ちゃんにわかって私にはわからないのよ。コイツが言おうとしていることがわかるなんて、千晶ちゃんはエスパー千晶だったのか。
 …いや、きっと違う。これは、私が鈍感すぎて気づかないだけだと思う。私ってそんなに鈍感なのかなって思うときもあるけれど、きっと鈍感な部類に入るってことはもうわかっていた。
「…いいよ」
 アイツは答えた。別に、千晶ちゃんが居ても問題はない内容だということがこの時点ではっきりした。でも、私に何を言おうとしているのかなんて、馬鹿で鈍感な私にはわかりませんよーだ。
 …まさか、告白だったりしてね。まぁ、ありえないんだけどね。
 何の内容かわからないまま、アイツの後ろについて行った。

2007/9/8
加筆 2009/9/16

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