「手を打ってるって何?」 これ以上、平穏な学生生活を望む私に何があると言うのでしょうか。コイツが考えていることなんてわからない。 「…シバ先から連絡行ってないのか?」 シバ先―――柴田先生は私達の担任であるが、担任からの連絡って何っていうのよ。ストレートに言いやがれ!あぁ、それにどうして先生から?私の学生生活をさらに崩壊させているようにしか思えないんだけど! 「どうして、シバ先から?私は知らないわよ!!ずっと家に引きこもってたけど、連絡なんか来てません!」 願わくば、本当に私の平穏な学生生活を送れるならば、これ以上何もないことを祈りたい…というよりは、コイツと関わりのない生活を送りたい。何かとコイツとのことでからかわれるのはもう嫌だ。 「…引きこもっていたって、オタクだったの?」 「りっちゃん!そうじゃなくて、家で勉強していたの!」 受験生以上に勉強してるっていってもおかしくない。と言っても、私も高校2年生。そろそろというより、入学してからずっと進学に向けて勉強してなければならない状況なのも本当なんだけど…高校生活って遊ぶことも大事って思えるのはわかる。だからか、クラス全員で遊ぶということは長期休暇に入るとよくあることだけど…せめて、コイツと同じ学校、いや、同じクラスでなければ、今より少しは平穏だったような気がする。一体いつから私の学生生活はこんなに無茶苦茶になってしまったのだろうか。 「まぁ、勉強オタクって言えないこともねぇな」 「失礼ね…夏休み明けの課題テストはアンタにだけは、絶対負けない」 コイツに負けているから、周りから甘く見られているに違いない。だったら、今度は絶対負けてたまるもんかと思って、勉強しまくったのだ。今回は、負ける気もしないが、コイツはいつからか勉強しなくても、良い成績だからムカつく。 「そんなこと言えるようなら、大丈夫だな」 「なっ…何が?」 本当にコイツは何を考えているのやら、わからない。 「…さぁな。それより、早く行くぞ」 「って、シバ先から何の連絡が周ってくるのよ!」 「後で言うよ。シバ先が忘れているとしか思えないからな」 確かに、シバ先の忘れ癖はひどいものだけど…今、言えよ!今! 「ちょっと!」 「仁美、今は先を急いだほうがいいみたいよ」 私より先に、りっちゃんが言葉を紡ぐ。よく見ると、先には皆さんお揃いで… 「神野に長谷川!遅いぞ」 男子が私達に声をかける。というより、待っていてくださったんですね。それはそれは、ありがたくないことをしてくださっているのね。 「ごめんごめん。いやー久しぶりに仁美をからかうのは楽しくてさ、遅れちゃったよ」 「ちょっと、りっちゃん!」 何間違ったこと言ってんのよって、私をからかっていたの?いや、からかうと言うより、弄られていたような気もしますが…それが、からかうってことなの?って、えぇ!!なんか、皆の顔がにこにこしているように見えるのは気のせいですか? 「まぁ、それならしょうがないよな」 「って、はぁ?」 「仁美、落ち着けって。幹事がそんなんじゃ後がもたないぞ」 誠人が制止に入るが、幹事に勝手にしたのは何処のどちらさんよ。それより、どうして千晶ちゃんが私を指名する理由も教えてよ。 「というか、何度も言うけど誠人1人でやってよ。つか、アンタをぼこぼこにしないと私は気が済まないんだけど」 忘れてはいたが、今日の全ての元凶はコイツだ。コイツをぼこぼこにしないと、気が収まらない。本当は今日此処にも行くつもりはなかったのに、どうしてコイツのせいで、母には玩具にされ、無理やり連れてこられたと言っても良い状況になっているのかすっかり忘れていた。 「あぁ…まだ、怒ってる?」 「もちろん、私の母さんを買収しやがって」 「それは、俺も同感だな。ボコボコにしてやるぞ。誠人…」 あぁ、コイツも今回男子1人浴衣着せられて怒ってんだな。まぁ、それもそうか…というか、ボコるタイミングはいつがいいのだろうか。 「ちょい待った!此処で喧嘩騒動起こして、警察に補導とかになりたくねぇだろう?」 それはハッキリ言ってなりたくはないが、ボコボコにしてやりたい思いはいっぱいで、いますぐにでも誠人を半殺しにしてやりたいのは本当で…此処にきて、やっといつもの私が戻ってきたのかもしれない。弱気でいたら駄目だ。強気でやり過ごさなければならないことを思い出す。 コイツとの関係なんて、どうだっていい。りっちゃんが言っていたとおり、私は私のまま、今までどおりに過ごすだけだ。 「ほぉ…ボコられる覚悟はあると」 「はいはい。後日、なんでもさせていただきますので今は怒りを鎮めろよ」 そう言われ、私もアイツも誠人にとってかかるのをやめた。 「やっとこの二人が落ち着いたので、そろそろ全員、お祭りを楽しみたいと思っているようなので、19時に一番奥の寺院に集合ということでいいか?そのあと、皆お楽しみ、肝試しを行うんでよろしく!」 「って、はぁ?」 自分でも思うが間抜けな声を上げてしまった。 今、なんて言った?肝試しだと…?そんな話し聞いてないぞ。つか、この後に打ち上げやるとしか私は聞いてないぞ。それに、今から暇じゃん。いくら祭りだからって、地元なんだから、規模は小さいし、何もすることはないし。今から約1時間近く、何をしろというのやらって、もしかして、最初から肝試しするつもりでいたんじゃ…今から1時間はその準備ってことなんじゃぁ…あぁ、誠人の馬鹿野郎!! 「アレ、仁美には言ってなかったっけ?」 「知るか!!私は帰るぞ!!」 「でも、仁美幹事だろう?そのあとの20時からの花火大会のあと、希望者だけの打ち上げ会やるんだからさ」 何呑気に言ってるんですか?私は、アンタをぶち殺したくなったよ。っていうか、幹事なんて1人いれば十分だってさっきから私は何度もアンタに言ってるじゃん!! 「その打ち上げのことは聞いてたけど、肝試しは知らないわよ!!」 「まぁまぁ、神野。いいじゃん。女子は皆乗り気なんだから」 「何、勝手なこと言ってんのよ。私は遅くても19時過ぎには帰るつもりでいたんだから!」 「アレ、お前、打ち上げのほうは?」 「そんなの誠人に任せるに決まってるでしょう!とりあえず、人数確認等の仕事だけしたら、私はいらないでしょうが!!」 そうだ。帰ってから勉強しまくって絶対にアイツに勝つと決めているのに、こんなところで道草食っているときじゃない。 「仁美、お前に言い忘れていたんだけど…」 アイツがココぞとばかりに入ってくる。もう周りの状況なんか知らない。今は、自分の身だけが大切だ。誰が何と言おうと私は、私の道を突き進むだけだ。誰も止められはしない。 「はぁ?」 「おばさんと彰人さんからの伝言、『夏休みは引きこもり気味だったので、たまにははめをはずしてきなさい。22時までは家に入れないつもりだから』だとさ」 なんだってぇえええええええええええええええええええええ! 声にならない声が私の中でぐるぐる回り始める。なんだか、最初から全て仕組まれていたようにしか思えないのは気のせいだろうか。というより、肝試しって…嫌な思い出しかないのに、どうしろっていうのよ!! …あぁ、やっぱり憂鬱極まりないことばかりだわ。 それに、シバ先が連絡し忘れていることやら、なんかいろいろと新たに問題が出てきたって感じで、今日のあと数時間はどうすればいいっていうのよ!! 2009/12/30 Copyright (c) 2009 Akari Minaduki All rights reserved. |