自分達が遊ぶことに夢中で、周りのことなど気にしていなかったが、やはりコイツが好きなクラスの女子が1人も見当たらないのがおかしい。っていうか、皆何処に行った?辺りを見回すがやっぱりいない。そろそろ誠人が言っていた集合時間にもなることだから、集合場所に向かおうとしていた。 「あぁ、また外れた!」 「一体何度目だよ…つか、当たっても倒れてねぇし」 これまた私からすれば、因縁深い射的をしていた子供が2人。小学生くらいだろうか。男の子と女の子。昔の自分を見ているようだった。だからだろうか、声をかけたくなってしまったのは… 「どうしたの?何か取れないもんでもあるわけ?」 「アンタ誰?」 …子供正直でいらっしゃる。確かに、これくらい歳の子には知らない人にはついて行ってはいけないとか言われているくらいだし。当たり前の反応と言えば、当たり前の反応である。 「通りすがりのお姉ちゃん」 「…胡散臭」 …最近の子供はなんていう言葉づかい何でしょう。まぁ、胡散臭いって言ったら胡散臭いんだけどね。 「オイ、仁美何やってんだ?」 コイツは私がいないのに気づいてか引き返したみたい。まぁ、そろそろ集合場所に行こうと思って、その前にコイツはトイレに行っていた。 「ぁ、ちょっとお金貸して」 「あ、あぁ…」 状況を飲み込んでいないコイツからお金を受け取り、射的屋のオイちゃんにお金を私、銃を受け取る。 「さぁてと、どれがほしいの?お姉ちゃんがとってあげよう」 「えっとね、あの巨大なくまさん」 女の子が指差したそれをみると、昔を思い出す。一番上にどかんと座っている巨大なくまの人形。そう、アレを昔コイツが落してくれたのだ。 「よっしゃぁ、お姉ちゃんに任せなさい!」 射的は昔から好きだった。今日だって久しぶりとはいえ、さっきはほぼ狙い通りにできたんだから、こんなもん落とせるはずだ。昔のコイツにできて、今の私ができないわけがない。 狙いを定めてトリガーを引いた。 「お姉ちゃん…」 的には当たったが、落ち切っていない。やっぱり、でかくても重さの関係で落ちていないのだろうか。 「もう1回よ!絶対、私が取って見せる…!!」 「仁美、何熱くなってんだよ」 「アンタは黙ってなさい…私が絶対に打ち落として見せる」 「お姉ちゃん…怖いよ…」 子供が怯えているのに私は気づかず、何度もそりゃぁ何度もお金を払っては打って、いくら当てても巨大なくまが落ちる気配はなかった。 「なんでよ…もう」 「親仁、今度は俺がやるから」 私の様子を黙って見ていたコイツが、オイちゃんにお金を渡して銃を受け取っていた 「って、えぇ?」 「このままだと集合時間に間に合わねぇ。てか、お前…こういうの下手すぎ」 「アンタに下手と言われる筋合いない!」 確かに何度もやって落とせないのは下手な証拠なんだろうけど、アンタなら一発で落とせるとでもいうわけ? 「まぁ見てろって…」 なんだか癪にくるけど、黙って様子をみていた。 そして、トリガーを引くと、巨大なぬいぐるみは床に落ちていた。 「一丁上がり。親仁、それ、綺麗なのに替えてくれよ」 「あぁ。ほらよ」 ぬいぐるみを受け取ると、それを子供に渡した。それを受け取った子供の顔を見るととても喜んでいるのが分かる。 「ありがとう、お兄ちゃんとお姉ちゃん」 女の子はとてもうれしそうだったが、その隣にいた男の子の顔は不機嫌極まりないものだった。一体何があったのかと思ったけど。 「ありがと…」 小声で感謝の声を漏らしていた。そして、その後にさらに続いた。 「お姉ちゃんたちって恋人同士?」 「全然違う!!」 全力で拒否する。どうしてそんな質問出てくるかもわからないけど、なんでそうみえる。コイツは幼馴染で私の友達だ。 「ふーん。恋人じゃないのに、そんな歳になってまで一緒に回るんだ。変なの」 生意気な糞餓鬼がぁ…私だって好きで回っているわけじゃないっていうの!!アイツはなんかすました顔をして何も言わなかった。 「だったら二人はなんなのよ」 「もちろん、恋人同士だよ」 女の子が答えるけど……いまどきの子供はそんな歳から、恋人がいるんですか。いや、それよりちゃんと恋人っていう意味わかってる?それとも、わかってなくて言ってるの? 「…まぁ、頑張れよ」 男の子がアイツに言ってみたいだけど、何を頑張れって言ってるんだろう。 「本当にありがとう!そろそろ行くね」 女の子は巨大なぬいぐるみをしっかりと抱きしめて走って行った。その後を男の子が慌てて追いかけている。本当にあの2人って恋人?いや、まだ小学校中学年ぐらいに見えるんだけど… 「なんか懐かしいな」 「え?」 「…昔の俺たち見ているみたいでさ」 「そう…かもね」 違うと否定できなかった。どこか似ているような気がしたのだ。昔の私とコイツに。 それより、アレくらいから恋人とか言ってたら将来どうなるか楽しみなのと同時に、あの子たちが不安でしょうがない。 「あ、それよりどうして1発でとれたわけ?」 「…それくらい自分で考えやがれ」 「教えてくれたっていいじゃない」 「嫌だ。あ、デートしてくれたら教えてあげようか?」 コイツってやつは殴り殺したい。なんでデートとかいう単語が出てくる。殴りたいが、浴衣という格好で動きにくいのも事実だ。 「お断り。それなら知らないほうがマシ」 本当は気にあるけど、そんなことする気にはなれない。てか、そんなのするのは恋人同士だけだ。私とコイツは付き合っているとかの関係じゃない。今後この先も断じてない!私はコイツのことが好きとかそんなことはないんだから…っ!! 「だろうな。まぁ、俺は気長に待つよ」 「…っ、勝手にして…っ」 なんだか恥ずかしい。コイツとの関係を別のものにするなんて考えたことなかったし、昔のままでいいと思っていた。だから、告白は受け取れないっていうか…なんていうか…今が一番良い関係だと思っていたからか考えられない。ただ、コイツの中身が今日は昔みたいな感じだったが、こないだ見せたアイツの顔は何処か違っていた。 長年幼馴染をしてるけど、まだまだコイツのことはわかっていない。きっとお互いのことなんてまだわかっていない。進展を望んでいるのはコイツだけ。私は望んでいない。 アイツは諦めないって言った。だったら諦めてくれるようにどうにかしないといけないのかもしれない。だって、アイツの本当の顔というものは別だったから。 でも、そんなこと関係なしで、今日はとても楽しかった。 2010/2/28 Copyright (c) 2010 Akari Minaduki All rights reserved. |