8月下旬某日。今日から学校である。なんだかいろいろと考えた結果、今日からの学校生活がどうなるかなんて私が知ったことじゃない。きっとまた敵を増やしただろうなとか思いながら、重い足取りで自転車を漕いでいる。
 夏休みで起こったアイツとのいろいろ。それが全部解決しているわけじゃない。でも、夏祭り以後は普通に接していたような気がするというか…夏祭り以後、誰にも会っていないっていうか…女子高生としてはあるまじき行為をしていたのには反省する。
 けど、アイツとは普通のメールのやりとりはできているし、そこまで深く考える問題でもないような気がするからとりあえずこのままでいいやという結論に達した。向こうも何も言ってこないので構わないってことだろうとこれまた勝手な解釈をする。
 …待つとか言っていたし、現状維持で良いというのが私の結論だし、まぁ、どうにかなるでしょう。
 学校につき、教室まで上がると既にアイツは学校に来ていた。0限がないため此処まで普段より人が少なかったけど、0限と同じ時間帯に来たのが失敗だったのかもしれない。今、教室にいるのは私とアイツだけだった。
「おはよう。仁美」
「…おはよう。早いんだね」
「あぁ。生徒会長としての初仕事頼まれてさ」
「なるほどね…そういえば、今日だっけ。任命式」
 私の学校ってなんでも一緒にやってしまう傾向があるから、始業式と一緒にいろいろとやる。終業式の日もこれから始まる運動会のブロック発表とブロック決意式を一緒にやってしまった。
「まぁな…」
「頑張ってね。生徒会なんて面倒だと思うけど」
「それはお前もだろう?仁美。まぁ、よろしくな」
「…はいはい。よろしく頼みます」
 少しだけ意味わからないことを言われたけど、とりあえず適当に返した。
 1学期のときに、生徒会選挙が既に行われており、次期生徒会長に決定しているコイツはこれからがいろいろと大変だろうなって少し思う。あ、そういえば、誠人も次期書記だったっけ?というよりは、コイツも誠人も立候補者がいなくて挙句の果ては先生の推薦だからねぇ…それ故に選挙は信任投票だったし。ちなみに会計は決まっているけど、副会長は生徒会長の指名によるものだから私も誰かは知らない。まぁ、大抵、生徒会長が男だったら副会長も男になることが多いから男子だとは思うけど。生徒会長が女の子だったら副会長は女の子の場合が多い。そもそも、生徒会なんて面倒なことは頼みにくいっていうのもあるしね…立候補者がいればいいんだけど、それもなかなかないっていうかねぇ…
 先生の言い分は、男だったら女にしろとかだけど、ここ数年はそんなの少ない。というより、私の兄貴が、副会長の選任は指名制度に変えたため、そんなことはいえないんだけど。
 でも、過去の統計をみるとやっぱりそうなっているのだから謎だ。

「うちの学校もおかしいよねー5時間目に始業式とか」
「まぁ、しょうがないんじゃない?今日は3科目の課題テストした後、大掃除とかやったしさ」
 課題テストは明日まで行われる。でも、ちゃんと勉強していたおかげで結構できた。今度こそアイツに勝てる自信があるって言っていいぐらいだ。まぁ、確かにそのせいで始業式が遅くなるのはどうかとも思うけど…普通は、始業式の後にテストとかじゃないのかと思いたくなる。終業式も授業が終わった後だったから、そこまで疑問じゃないけど。ほら、今は授業日数が足りないって言っているくらいだしね。
「そうだけどさー普通逆でしょう?」
「…そうだね」
 体育館まで向かう途中にりっちゃんと話しているけど、相変わらずスムーズに進まない。学年ごとに体育館の入り口が決められているけど、やはり人数が多いので全員が入りきるまでいつも時間がかかってしまう。5分前行動を基本としろっていつも言われているけど、いくら早く来ても全員がその行動をしなければ意味がない。
 そして、今日も相変わらず混戦していた。
 今日の式までが旧生徒会が仕切っているみたいだけど、旧体育委員長がマイクを持って指示を出しているようだけど、私語などが多くて後ろのほうまで指示が行き届いていない。
「…じゃぁね、りっちゃん」
「うん。後でねって…仁美、此処でいいわけ?」
「え、なんで?」
 出席番号順に並ぶため、自分のところに移動しようとしたらりっちゃんが私を呼びとめる。此処じゃなかったら、一体何処だというのか。
「だってアンタ…!」
 りっちゃんが驚いた顔で私を見ているけど、私何かしましたか…?
「ぁ、仁美いた…!」
「実夏?どうしたの?」
 横から実夏が急いでやってきた。私の腕を掴むと実夏は私を引っ張りだす。
「って、え?」
「遅いと思ったけど、まさか本当にこっちにいるとは思わなかった」
「どういうこと?」
 腕を引っ張られる理由もわかりませんが、今の状況に私はついていけません。どうして実夏が私の腕を引っ張っているのでしょうか。
「仁美はこっち」
「って、はぁ?」
 1年の場所を横切ると、その横は職員と生徒会や今日舞台に上がる人達のスペースである。別に表彰状とか貰ったわけでもないのにどうしてそっち側に連れて行かれるか理解できずにいた。
「…何驚いているの?原田君から連絡行ってるでしょう?」
「いや、聞いてませんけど」
 アイツのメールも夏祭り以後は全部チェックしたけど、そんなのなかったし、今日だってそんなこと聞いてない。
「原田くーん…」
 そのスペースには既にアイツがいて、実夏は怒りを露わにした声で小声にアイツに言った。
「…すまない。分かっていると思ったんだけど」
「まぁ、そりゃあ、そうだよね。まぁ、とにかく仁美は此処ね」
「は?」
 コイツと誠人の間に挟まれて、今の状況を考える。
 そして、やっぱりというか、それしか答えがないということで、此処まできてようやく答えが見えてきた。
「…ねぇ、まさかとは思うけど副会長って誰?」
 なんとなくコイツに尋ねるのは嫌だと思って、後ろに立っていた誠人に尋ねることにした。さすがに大分静まり返っているので、本当にひそひそ声でだ。
 すると誠人は呆れた顔で答えてくれた。
「俺と高志の間に居るんだから、お前に決まっているだろう。仁美」
 …私の嫌な予感は的中してしまった。だから、今朝もあんなこと言っていたのか?
 ちょっと待て!私、そんなの許可した覚えない!っていうか、やりたくない!副会長だなんてめんどくさい役職!いや、そもそも生徒会やりたくない!だって…だって、大変なのはもちろんのこと、避けまくっているコイツと一緒に仕事やるってことでしょう…?何が何でも嫌だ。つか、今からでも可能ならば辞退したい。…といっても、指名制度。辞退できるわけがない。
「やっぱり…っていうか、俺の嫌な予感は的中していたか」
「…ちょっと、どういうことよ?」
「シバ先の連絡回ってないみたいだから、高志が直接聞いたらOK貰ったって言っていたけど、お前の行動とか見ているとなんかおかしいって思っていたからさ」
 誠人、そんなことを思っていたならもっと早く教えてくれてもいいじゃない。夏休み中なら、まだ抵抗してどうにか変更できたかもしれないのにさ。
「…やられた」
 まさか、夏祭りに手を打っているって言っていたけど、副会長に指名するってことだったのかなぁ…
 私も話をちゃんと聞かなかったのが悪かったと思うけど、もしあの時拒否していれば、もっと別の展開が待っていたのかも知れないと思うと後悔しきれずにいた。

2010/3/14

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