「本当に昨日はお騒がせして申し訳ありませんでした」
 1人1人に謝罪した後、最後に全員が揃ったところで深々と頭を下げ謝った。いくら、記憶にないとはいえ、私が暴れたのは事実であり、周りの皆に迷惑をかけたのは事実である。
「気にしてないからさ、そんなこと言うなって」
「そうそう。田中君から聞いてるし、やっぱり副会長指名っていうのでそういう気持ちになるっていうのもなんとなくわかるからさ」
 隣に座っていた二人がそう言ってくれるけど、周りは快く思っていないのだろう。だって、誰も私のあんな醜態を知らなかったんだろうし…知っているのは、本当に極僅か。それを、いきなり受け入れろというのも無理なのかもしれない。そもそも、私があの兄貴の妹という時点で、入学当初からいろんな噂が流れていたものだから、それを気にしているのかもしれない。
「そう言ってくれると嬉しいけど、今後このようなことにならないようにします」
「んじゃ、さっさと内容のほうに移るぞ」
 誠人のその言葉に、え?これで終わり?と思ったけど、確かにこれ以上何もいうことがないのも事実だし、とりあえず皆も許しているようだったので渡されていた書類に目を通し始めた。

「…深く考えないようにね」
「実夏…」
「それに、誰も気にしてないっていうのは本当」
 そう言ってもらえるのは本当に嬉しいんだけど、やっぱり胸にくるものがあって、気にしないわけにもいかない。
「でもさ」
「…それにね、原田君が最初に言っていたの。生徒会が仁美の捌け口になればと思って指名しているから、多めに見てくれってね。皆わかっているから、仁美が気にしなくてもいいし」
「あぁ、なんか本当に申し訳ない…」
 アイツがまさか生徒会のメンバーにまで話しているとは思っていなかった。でも、それが私を指名したことに関してのけじめなのかも知れないと思ってしまう。確かに、捌け口なんてなかったけど…そんなことしてしまったら、逆にストレスがたまってしまうような気がする。
「まぁ、気楽に考えて。それに、仁美のあんな一面を見れて私は面白かったけど」
「面白いってねぇ…」
 自分が何をしたかも覚えていないのに、そんなこと言われてもなんとも言えない。本当に最悪だ…
 自己嫌悪に陥っていると、後ろからポンっと肩を叩かれた。振り向くとそこには、誠人がいた。
「…誠人」
 てっきり、アイツだと思っていた。アイツは先生に報告してから教室に行くということだったので、一番最後に出てきた私達の後ろにいるのはアイツぐらいだと思っていたのだ。
「本当に気にするなよ。高志もいろいろと反省しているようだしさ」
「…なんで、アイツが反省する必要があるわけ?」
 アイツに反省する必要はない。反省する必要があるのは私だけである。確かに、その原因を作ったのはアイツであるかもしれないが、別に気にしてはいない。
「まぁ、いろいろと…ね。やっぱり、安易に副会指名をしたことに一番反省している様だぞ」
「……もういいのに」
「それは、俺じゃなくて高志本人に言えよ」
 誠人はそう言うと、さっさとその場を立ち去った。でも、私は先日、そのことについては言っている。でも、まだ気にしているのかもしれない。やはり、いままで私がアイツを避けていたことが原因なような気もするし、ちゃんと返事をしていないのも原因だと思う。
「原田君に素直に伝えるのが一番だと思うけど、仁美には難しいってわかっているのかな…」
「どういう意味よ」
「秘密。田中君に聞いてみなさい」
 すると、実夏は私を置いて足を速めて教室に向かった。
「ちょっと待ってよ!実夏!」
 まだ、授業が始まる前。生徒の多くが登校している時間。でも、学校にまだ生徒はそこまで来ておらず、私の声は廊下に響き渡っていた。
 生徒会というのにはまだ不安と文句が残っている。でも、やるからにはちゃんとやるのがモットーだ。
 アイツとの関わる時間が逆に増えてしまったようだけど、それもしょうがない。全て運命だと思って割り切るしかない。
 ただ、その時間で何かが変わるとも思えないし、今のままだと思うのが私の推測である。例え何かが変わってしまっても、そのときはそのときで対処していくつもりだ。
 何も心配することもない。唯一心配しないといけないのが、アイツの親衛隊っていうかそのメンバーで、その対処はきっとアイツのほうでこれからどうにかしてくれるのであろう。じゃないと困るし、私はこれから副会長としてアイツを支えないといけない立場。いろいろと面倒なことはごめんだ。
「仁美」
 アイツが私を呼ぶ声が聞こえる。私はそれに反応して、少し微笑んだ。アイツはその反応を見て少し眉を潜めたが、その後の顔は何処か喜びに満ちていたような気がする。
 今までとは違う何かが始まる。そんな予感がした。
「で、何か用?」
 用もなければアイツが呼ぶはずもないのだが、一応聞いてみる。
「…副会長としての仕事のプリント」
 そう言われて手渡されたプリントの山は結構な量だった。1つ1つに目を通すのにどれだけ時間がかかるかわかったもんじゃない。
「コレ、明日までによろしくな」
「ってはぁ?」
 私にプリントを渡した瞬間、アイツは自分の席に着いた。やっぱり、アイツ、ムカつく。そして、別にアイツとは何んとも起こらない、いや起こるわけがない。
 そして今の様子を見ていたクラスのアイツの好きよメンバーの方からの視線はやっぱり痛い。私だって好きでなったわけじゃないというのはわかっているとは思うけど、私への恨みは倍増であることが予想された。

2010/3/27

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