「そうよね。わかってる。兄貴があんな人物だってことぐらい」 ホントこのキャンプを通じて改めて兄貴がどんな人物か再認識させられているような気がしてならない。兄貴が高校を卒業したことで家でも接点が少なくなったから、半分忘れていたものを思い出された気分。 寝る準備をしながらも、やっぱり気になるのはりっちゃんと兄貴のこと。 もう何も聞かないで置こうと思ったけれど、兄貴の様子にあからさまに機嫌を悪くしているところをみると、やっぱり落ち着かない。 「ねぇ、りっちゃん……」 どうせ教えてくれないと思いながらもさりげなく聞いてみることにした。今日はこれで最後にしよう。りっちゃんもしつこいのは嫌いだろうし。 「なぁに?」 りっちゃんは、さっきみたいに不機嫌じゃなかったけど、やっぱり聞いていいのか不安になったけれど…… 「兄貴と本当に何があったの?」 誰が見たって兄貴と何かがあったのは明白。 しかも、私が眠っている間の時間に。アイツは原因を知っているようだけど、起きていたのか誰からか聞いたからだと予測する。 「……」 少し沈黙していたが、りっちゃんは溜息をもらした後に答えてくれた。 「仁美には悪いけど、教えられない」 「なんでよ」 「稚香ちゃんも教えないでね」 「もちろん、誰にも言いません」 結局私だけ仲間はずれなわけね……もう半分諦めていたけど、やっぱり諦めるしかないわけでなんだかがっかり。 でも、せっかくキャンプに来たんだから夜くらいはガールズトークに花を咲かせることにした。私と稚香は半分体内時計が狂っていたのが原因で眠くないっていうのもあったけど、りっちゃんは眠たそうな顔をしながら話に参加してくれた。 「あ、今思い出したけど、りっちゃんの彼氏って誰なわけ?」 「え、今それを聞く?」 「うん」 夏祭りのときにいるって知ってから、それっきり聞いていなかったような気がする。夜のガールズトークっていえば恋バナだし、此処でもしかしたら話してくれるかもしれないって思ったんだけど…… 「私よりも仁美のことが知りたいんだけど。高志と何処まで進んだのかなぁ?」 「なんもないわよ。ってなんでアイツと私を皆くっつけさせようとするのよ!」 「だって傍から見ればくっつかないほうが不思議なくらいだもの」 なんですって?そんな風に見えるようなことを何にもした覚えはないんだけど。 今までのことを思い出しても、別に恋人のように見えるようなところは……いや、アイツにクラスが全員いる状態で無理やりキスをされた。 その他にも思い出してみれば、意識はしなかったけど、普通の幼馴染の男女がするような行動をとっているところは少ない。それよりも、幼馴染って言っても疑われそうな行動ばかりが思い出される。 でも、これも全てアイツが原因なわけであって私のせいじゃない。 「いつも思うけどなんでそうなるの?」 「だって付き合ってないのが嘘のようにしか見えないわよね、稚香」 「……まぁ、たっちゃんのほうは仁美のことを恋愛対象として見ているしね」 アイツは本気で私を恋愛対象でみているのかと改めて確認する。告白もされたけれど、私のほうは何もしなかったから、結局は放置だ。はっきりいえば、恋愛とかに興味はない。 それに、付き合うって本当になんなのかって逆に聞きたいくらい。付き合った、だったら次に待っているものは何?……まぁ、漫画やドラマからその次に来るものは想像できるけれど、アイツと私が付き合うなんてことは絶対あり得ない。 私がいろいろと考えているとりっちゃんと稚香は笑い出した。突然、笑いだしたことに何かあったのだろうかと思ったけど向こうから笑っている原因を答えてきた。 「仁美って本当にかわいいわね」 「ホントホント。たっちゃんが長年好きな理由がようやくわかった気がする」 「……二人ともどういうことよ」 またもや私だけがついて行けない状況で困ってしまう。 りっちゃんの喧嘩の原因からどうしてこうなってしまったのかもわからないけど。まぁ、りっちゃんからしてみれば自分の話題よりも私の話題のほうが嬉しいんだろうけど。 私はね、もうね、アイツの話題なんか懲り懲りなんだけどね。 キャンプで忘れていたけど、学校が恐ろしくてしょうがないし。 「まぁそれは本人に聞いてみればいいわ」 「聞けるわけがないでしょう……」 聞けるわけがない。アイツに私の何処が好き?とか自分から聞くなんて気持ち悪くてできるわけがない。そもそも、アイツにそんなことを聞こうとするだけで体に悪寒が走る。 「それよりりっちゃんは昨日兄貴と何処行ったの?」 「あー……連絡しないでごめんね。実は、先輩と飲んでたの」 美輪先輩の電話からそれはわかっているけど、どうして飲むことになったのかが気になる。 「なんでりっちゃんを連れて行ったの?」 「さぁね、たまたまじゃないの?」 「りっちゃんは知らなかったのよね?」 「知らなかったわよ。連れて行かれたのが居酒屋だったんだから」 兄貴よ、どうしてりっちゃんを居酒屋に連れて行ったのよ。兄に聞くわけにもいかないし、これ以上はりっちゃんから聞き出せる情報はないのかもしれない。 りっちゃんは淡々と語っているし、自分が不利益になるようなことは言わないでしょうし。 稚香は稚香で、何も介入して来ない。あれ、それより何時りっちゃんと仲良くなったんだろう。りっちゃんのほうは名前で呼んでいたような気がするんだけど……考えてみれば私が寝ている間っていう答えが簡単に浮かんでくるから何も聞かないで置いた。 「仁美のほうは相変わらずってことだから、稚香はどうなの?好きな人とかいないわけ?」 「私にふるわけ、その話を……?」 これまた突然話を振られた稚香は困ったように答えた。 まぁ、稚香の恋バナっていうのも気になるけど、稚香ってあまり学校に行っていなかったから恋人作るにしても別の学校とかだったりするんじゃないかと勝手に予測した。 「まぁ、聞かなくても答えは分かっているような気がするんだけど、一応ね」 「今は恋人なんて作るつもりありません、以上」 「やっぱりね、稚香ならそうなるでしょうね」 「わかっているなら聞かないでよね、りっちゃん……」 二人の会話についていけなかった。稚香ならどうして恋人を作るつもりなんかないですぐさま解決するのよ。私だってそういったら、アイツとくっつけさせようとしたくせに。この差は一体何なのかと思っても、りっちゃん達は教えてくれないだろう。 その後も今後の学校についてとか今はやりのアイドルとか稚香情報の最近人気のある漫画やゲームについても話した。こうやって夜な夜なガールズトークって修学旅行とかしかできないからとても楽しかった。 普段の学校生活もこれくらい気楽にできれば良いものの、アイツが壊してしまったと言って良いくらい壊れてしまっている。 話に夢中になっていて、半分忘れていたけれど、明日で終わりのこのキャンプ中にちゃんとりっちゃんと兄貴が仲直りできますように。強く祈りながら眠りに着いた。 2011/3/2 Copyright (c) 2011 Akari Minaduki All rights reserved. |