問い詰めて聞こうと思ったけど、正攻法では無理だ。今までと同じで軽く流されるだけだ。うっかりなんかでもらしてくれるのが一番良いけど、口が堅いあの2人相手ではほぼ不可能に近い。 「どうしようかな……」 あの2人からじゃなくても、誰かに聞ければいいんだけど、兄貴を恐れてか誰も口を割らない。 「お前はまだ俺と律のこと気になっているのか……?」 突然の兄貴の登場にびくっとなってしまったが、兄貴から直接聞いてくるなんて思ってもしなかった。もしかしたら、あまりにも私が気になりまくっている様子に満足しているって可能性もあるけど。 「あたりまえでしょう……私だけ原因知らないんだから」 「うーん……条件によっては俺が直接教えてやろう」 「条件……?」 条件をつけるなんていかにも兄貴らしくてムカつく。その条件をのまないともう知る機会はないのかもしれないけど、無理難題な条件をつけられるんじゃないか不安になってくる。 「そう。条件を飲めば、律の意見無視で教えてやるよ」 「それって兄貴は私が知ることに反対ってわけじゃないの?」 「あぁ。俺はどっちでもかまわないし。律が嫌がってんだけだよ」 りっちゃんが嫌がるってどういうこと?自分で言うのもなんだけど、私だって口は堅いほうなのにどうして口止めなんかしたんだろう。 そもそも私だけ知られたくないってなんなのよ。 「で、条件は?」 「……お前がイエスっていうなら教える」 「何よそれ?ふざけんじゃないわよ」 条件は後からって……そんなことされたら契約違反も良いところじゃない!!兄貴もわかっているだろうから口には出さなかったが、兄貴は「だったら知らなくていいんだな」とか言って立ち去ろうとした。 ……私はもう知りたいという気持ちのほうがまさっていて、どんな条件でも呑んでやろうと決めた。でも、それが間違いだった。 「わかったわよ!条件呑むから!!」 「高志、お前、今の言葉聞いたな」 私の決意の叫び声を聞いて、すぐに立ち止まった兄貴は、まだ私の隣にいるコイツに声をかけてきた。此処は私にその条件を伝えるか、結局原因がなんなのかを先に教えるのが普通じゃないの? 「えっ……えぇ……」 「よし、万が一の証人確保……」 「はい?」 もうどんな条件でも呑んでやると決めたから証人など必要ない。兄貴の言動がわからなくて、私の思考回路は低下中だ。そもそも、条件なんかつけるなと言いたい。 「俺が教えるための条件は2つ。まず1つ目、クリスマス当日に用事を入れるな」 クリスマスなんてまだ何カ月も先だから、今から用事を入れないようにすればいいだけだ。この歳にもなってクリスマス会なんて開かないと思うし、友人の誰かが開くとして用事があるからいかないと答えればいいだけだ。そもそも恋人がいる人にとっては恋人と過ごす日だと思うし、恋人なんかいない私にとっては無意味なイベントと言える。でも、お祭りごと好きな母さんが何かしようとするかもだけど、兄貴のことだからそのことも考えた上の条件でしょう。 これくらいの条件は呑めるから、すぐさま縦に首を振った。 行事予定表みてないけど、クリスマスの日も学校の可能性もあるが、これくらいは可能なはずだ。 「って、条件2つとか聞いてないわよ」 条件はてっきり1つだと思っていたから少し驚きだ。それならそういってくれたらまだ考えたのに。といっても、知りたいという強い思いにそんなこと言われて立って呑んだでしょうけど。 「聞かなかったお前が悪い」 「そうね。だったら残りの1つは?」 この残りの1つが問題だ。絶対私が嫌がりそうな条件をぶつけてくるに違いない。私は身構えて、何を言われてもすぐさま兄貴に鉄槌を喰らわす用意をした。手を先に出したほうが負けとか言われても、この場合は兄貴が嫌がるって分かっていて出すってことが事前にわかっているからだ。これで普通のかわいらしい条件だったら、兄貴じゃないっていわないといけない。 兄貴の条件を呑むというのはそれだけ恐ろしいことなのだ。 「もう1つの条件はその日に高志とデートしてもらう」 ……今何か聞き慣れない言葉を聞いたような気がします。あ、わかりました。これ夢ですね。きっと夢に違いありません。そもそも兄貴が今まで黙っていたようなことを急に喋ろうとするなんてありえませんし。そうです、夢です、だったら早くこの夢よ、醒めてくれ。 私の思考回路は本当に止まってしまった。それと同時に、体もどうすればいいかわからずに固まってしまう。 そんな私を前にして、兄貴はにっこり笑顔で、アイツが呆れたように聞いていた。 「彰人さん、何言ってるんですか……?」 「いや、お前に誕生日プレゼントあげてなかったなーって思ってさ……丁度いいから、仁美との甘い時間第二弾をプレゼントするわ」 「プレゼントは結構ですし、それにそのプレゼントなんですか……」 「いや、律からクラスの皆が肝試しで仁美と強制的にペア組ませて、甘い時間をプレゼントしたとか聞いたからさ」 会話が次々と頭の中に入ってくるけれど、半分はめられた肝試しのことなんて思い出したくもなければ、甘い時間第二弾なんていらない。コイツと二人きりになったら何してくるかわからないのだから。 この条件はさすがに呑めない。でも、さっき呑むとか言ったし……あぁ、どうすればいいんだろうか。 「あっ……あに、き……それ本気?」 「おぉ!っていうか、もう条件呑むって言ったんだから、高志とはクリスマスデートしてもらうからな」 はっきりと告げられて心臓バクバクだ。でも、こうなった以上やるしかない。デートとか言ってるけど、誰か呼んでデートじゃなくせばいいのよ。あの親衛隊辺りに言えば、付いてきてくれるでしょう。それか邪魔だから消えてとか言ってくれるかもしれない。 「わかったわ。呑むわ、その条件」 拒否できるなら今からでも拒否しますし、こんな条件だったらもう今まで知りたいと思っていたけれど、どうでもよくなってしまった。結局、私の興味はこれくらいだったというわけだ。 私のその返事に兄貴はくすっと笑う。何がおかしいのかわからないけど、当日はデートなんか成立できないくらいにぶっ潰す気満々だ。 「高志も予定あけとけよ」 「……わかりました」 アイツは嬉しいのか嬉しくないのかさっぱりわからない。それに断りたくても兄貴の命令には断れないという悲しいのかもしれない。 「ってことで、教えなさいよ。りっちゃんと兄貴が喧嘩している原因を」 「あぁ、それな」 すると、兄貴は私の耳元でこっそりと囁いた。 「って、ええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 原因の前にそもそもの関係を教えると一言言って、告げられたのは兄貴とりっちゃんが付き合っているってこと。 その衝撃の事実に私の叫び声はキャンプ場一杯に響き渡った。 一体いつから?どうして兄貴とりっちゃんが……!夏祭りの時にはもう既に付き合っていたはずだからどうなってるの?私の頭は完璧に混乱状態だ。 コイツは誠人や夏祭りの時から知っていた様子だったし、何がどうなってんのか本当にわからない。 2011/3/8 Copyright (c) 2011 Akari Minaduki All rights reserved. |